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輝く女性になるために

「医療と食のフォーラム in Toyama」平成18年5月1日:富山国際会議場

「医療と食のフォーラム in Toyama」は平成18年5月1日、富山市の富山全日空ホテルで近茶流宗家・柳原料理教室主宰の柳原一成氏を特別講師に迎えて開催。第1部の基調講演で柳原氏は「食べることは、生きること」と題して伝承されてきた日本食を見直す必要性を強調した。第2部のパネル討論は、堂故茂氷見市長ら6氏が「食のこれからと医療」のテーマで意見を述べ合い、参加者約450人が地元の食材を生かした食事と健康のつながりなどに理解を深めた。

第1部 基調講演

近茶流宗家・柳原料理教室主宰 柳原 一成 氏

  • やなぎはら・かずなり
  • 江戸懐石の近茶流宗家
  • 柳原料理教室(東京都港区赤坂)を主宰する
  • 1942(昭和17)年、先代宗家・柳原敏雄氏の長男として東京に生まれる
  • 東京農大農学部卒
  • 柳原料理教室で日本料理の指導にあたる一方、
    食材そのものの研究にも力を注いでいる
  • 現在、東京農大客員教授
  • 儀礼文化学会常務理事
  • NHK「きょうの料理」の講師を務める。


「食べることは、生きること」見直そう「お家ごはん」

わが家の味を感じる「お家(うち)ごはん」の大切さを今一度見つめ直したい。お家ごはんが根付くためにも、母親が筋の通った料理を家庭で作り続けてほしい。

人間の舌は、ある程度の味の経験がないと養われない。舌は、甘い、辛い、ちょうどよいなど「味の音階」を見分けるが、味の音階の感じ方は人によってさまざまだ。大事なのは、各家庭に個別の味の音階がつくられる必要があるということだ。

英語で「母国語」を表す「mother tongue」を日本語で直訳すると、「お母さんの舌」。人は母国語で考え、わが家の味が一つの単位となり、その人の感性や人生観を培っていく。同じ火で作った食事を分け合って食べることが大切である。母国語と母の味は人を育てる上で同等の価値があると思う。

フランスやイタリア、中国など外国の料理は貴族の料理が起源だが、日本食は庶民文化のなかで起こり、受け継がれてきた。日本食は、水を多く使って料理する点が外国との大きな違いだ。油を使って作る外国に比べ、日本では水でゆでるなどゆっくり時間をかけて料理し、味わう「スローフード」を基本としてきた。

油が外国から日本に入ってきた時期は古いが、日本の文化になじまず広がらなかった。それは、煮炊き料理が多く、明治期まで続いてきたことからも分かる。ところが今は、時間も気持ちも余裕がなく、油で仕上がる料理を食べるように変わり始めている。時に時間を惜しまず料理に取り組む気概がほしいと思う。

料理には旬の食材があり、春ならばタケノコ、木の芽など、その季節に合った「香りのもの」を多く使いたい。それは、病院食でもいえるのではないか。病院食で重視される栄養のバランスは確かに大切だが、旬の食材が料理にさりげなく加えてあるだけで患者はうれしいものだ。ブリや大根の料理にはユズも添えたいところだ。それはこれからの病院に求められていくのではないだろうか。

日本人は、もっと自国の料理に自信を持っていい。フランスの家庭に行くと、フランス料理しか出してくれない。逆に、日本の家庭にフランス人が来た場合、どんな料理を出そうか悩むのではないだろうか。外国人は自国の料理をとても大切にする。日本のコメは二千年以上もの歴史があり、日本人は自信を持って日本食をアピールすべきだ。

最後に、「食は薬ではない」ということを強調しておきたい。あくまで「食べたものが結果的に薬になった」という考え方が好ましい。家庭ごとのお家ごはんをあらためて見直すことで、「食べる」ことが広い意味の「生きる」ことにつながるのだ。

パネル討論

ニーズにこたえ「地消地産」

氷見市長 堂故 茂 氏

  • 海越しに立山連峰を望む氷見市は、
    「200万人交流と食を通じたまちづくり」を進めている。
  •  私は21世紀を「環境と食糧の時代」と考えている。氷見沖には、国内でトップクラスの340種類の魚が捕れる漁場があり、水産資源は豊富である。氷見では定置網漁が400年以上の伝統を誇る。

捕り過ぎないという点で自然に優しく、漁場と日帰りができることから人に優しく、魚の傷みが少ないことでは消費者にも優しい理想的な漁法である。この技術を、サミットを開いたり、コスタリカやタイに出向いて伝授している。

低たんぱく米「春陽」を開発、広めようとしており、このコメを使った日本酒も開発するなど、氷見には農産物でも誇りたい食材がある。地産地消でなくあえて「地消地産」というのは消費者が求めるものをつくっていきたいという思いがあるからである。


家庭での食育こそ大切に

家庭料理教室クレス主宰 福島 ゑつ 氏

  •  日ごろから四季を実感できる旬のものを食べることは体に優しく、栄養をたっぷり取ることができ、健康につながる第一の方法だと考える。団塊の世代である私は、戦後の急速な食生活の変化に驚いている。何もかもが豊かになり、体型も変わる一方で、成人病などが増えているのは問題である。農耕民族である日本人にとっては消化が難しいものを摂取していることもあるようにも感じる。

昨今の若者は親がつくってくれたものを食べ、休日はレストランでというケースが多いのではないか。家庭料理で大切なのは、だれがだれのために作るか。「ごちそうさま」という言葉が自然に出るような環境が必要だ。食育は学校だけでなく家庭ですべきである。単品でなく、いろんな材料を組み合わせた料理を食べてほしい。そのために「いろんな色のある料理こそ豊か」と指導している。


マクロビオティックを普及

ライフサポート社長 篠根 肇 氏

  •  「マクロビオティック」という食の考え方について紹介したい。語源は「マクロビオス」であり、偉大なる命を尊重しようという姿勢を重視している。欧米から持ち込まれたものでなく、日本人の久司道夫氏が提唱し、海外で評価されて日本に逆輸入された。現在、扱っている製品について富山大学医学部第二外科で臨床データを取るなど、科学的に効果を検証している。

「マクロビオティックの根底にあるのは、人間は自然の中に生かされている存在であることを認識する「身土不二(しんどふじ)」という思想や、精製した白米でなく玄米食を奨励するなど、動植物はできあがった形で生まれている「一物全体(いちぶつぜんたい)」という考え方である。ライフサポートでは、東京と山梨県小淵沢でマクロビオティックを体験できる教室を開催している。食の欧米化が進む中、もう一度伝統食を見直すべきではないか。


食の情報発信と奉仕担う

富山全日空ホテル料飲統括支配人 桑原 悟 氏

  • ホテルの利用者に対しては、例えば卵アレルギーの子どもさんなら、卵そのものがだめか、揚げ物の衣程度なら大丈夫かなどを事前に聞いて対応している。利用者の6割が地元の人であり、課された役割は最新情報と正しい情報を提供することだと考える。富山全日空ホテルでもそのような視点からマクロビオティックを扱ったり、フォーラムを開催していると理解していただきたい。

「個人的には10年前、体重が120キロを超えたことがあり、健康診断で「糖尿病予備軍」といわれたことから食事療法に取り組んだ。家で食事する分には自分で制限すればいいが、外食の場合は「ご飯を半分に」と言っても、同量にされるなど、難しい点がある。自分が接客をする立場に立った時、より高度なホスピタリティーを求められても、それに対応できる環境を整えたいと考えている。


食の「おいしさ」に科学の視点を

富山大学医学部第二外科教授 塚田 一博 氏

  •  入院患者などに対しては腸と静脈のいずれかに栄養を入れる場合、腸の方が早く退院できることが確認されている。これまで食については栄養学、臨床栄養学、病態栄養学までにとどまっていたが、この先を考える必要があるのではないか。
    足りないものを補給するだけではなく、理論を超えた「旨(うま)い」と思える食とは何かについて、食と医療の関係を発展させ、エビデンス(科学的根拠)に目を向けていくべきだろう。

夏から料理教室開催

今年夏から多彩な顔ぶれの講師陣による料理教室を開催する。定員は20人程度とし、使用する食材に応じた受講料が必要。2年間の課程を終えた受講者には修了証が贈られる予定。

講師の顔ぶれ

柳原料理教室副主宰 柳原 尚之 氏

  • やなぎはら・なおゆき
  • 柳原料理教室(東京都港区赤坂)の副主宰
  • 東京農大農学部醸造学科卒
  • 醸造学の中でも特に酢酸菌・醤油に造詣が深い
  • 東京農大農学部卒
  • 同大卒業後、小豆島の醤油会社マルキン忠勇に研究員として勤務
  • 現在は、日本料理、茶懐石の研究指導にあたる
  • 著書に「近茶流柳原尚之の男が食べたいごはん! 白飯に合うおかず」(ゴマブックス)
  • TBSのテレビドラマ「渡る世間は鬼ばかり」で舞台となる「おかくら」の料理所作指導を担当する


家庭料理教室クレス主宰 福島 ゑつ 氏

  • ふくしま・えつ
  • 家庭料理教室クレス(東京都中央区佃)主宰
  • 長年にわたり、日本料理、洋風料理を学ぶ
  • 旬の素材を使った体にやさしい料理を作ることをモットーとする
  • もてなしができる料理をオードブルからデザートまで楽しみながら、自宅を開放したサロンで教え、客室乗務員などから人気を集めている
  • 在、千葉県農業会議コンサルタントとして「料理人に学ぶお料理教室」の講師を務める
  • 現在は、日本料理、茶懐石の研究指導にあたる
  • 著書に「近茶流柳原尚之の男が食べたいごはん! 白飯に合うおかず」(ゴマブックス)
  • 雑誌「クロワッサン」などでも活躍している


梅村由美子 Art of Dinig主宰 梅村 由美子 氏

  • うめむら・ゆみこ
  • 上智大卒
  • 料理書の翻訳、食品会社や料理学校のレシピ制作を経て、日本だけではなく、世界各地で料理教室を開催
  • 現在、プランタン銀座と自宅サロンで料理とテーブルコーディネートの教室を主宰
  • 雑誌は「オレンジページ」など、テレビでは「はなまるマーケット」(TBS系)、「エプロンメモ」(NHK)などで活躍中
  • 著書に「ケーキの本」(講談社)、「華やかおすしでおもてなし」(ソニーマガジンズ)ほか多数


クシマクロビオティックアカデミー講師 
  パトリシオ・ガルシア・デ・パレデス 氏

  • 久司道夫氏が指導するマクロビオティックによって母親の腎臓病が完治したことをきっかけにマクロビオティックに親しむ。
  • 19歳より同氏が主宰するクシ・インスティテュートで学ぶ。
  • クシマクロビオティックアカデミー(東京都渋谷区恵比寿)講師
  • 1995年に来日し、講演、料理教室、シェフトレーニングなどを通じて活躍
  • 著書「あまくておいしい!砂糖を使わないお菓子」(主婦と生活社)は4万部を超えるベストセラー


信太康代クッキングサロン主宰 信太 康代 氏

  • しだ・やすよ
  • 信太康代クッキングサロン(東京都新宿区)主宰
  • 短大卒業後、スイスのリッチモンド製菓学校、フランス・パリのルノートル製菓学校でお菓子作りを学ぶ
  • 簡単でおいしい料理と、本格的なデザートを紹介するメニューが人気を集める
  • NHKテレビ「きょうの料理」の講師をはじめ、「綺麗な女のかわいいお菓子」(講談社)、「ル・クールゼひとつで」(河出書房新社)、「お菓子上手 私のとっておき」(小学館)など著書多数


鈴木薫料理教室主宰 鈴木 薫 氏

  • すずき・かおる
  • 鈴木薫料理教室(東京都渋谷区恵比寿)主宰
  • 2000年より日常で手に入る食材を使った無理なくできる料理、毎日の家庭料理を中心に「鈴木薫料理教室」、子供向けの教室「Kids Class」も開いている
  • 「MISS」「オレンジページ」などの人気雑誌で連載を担当。
  • 「一度に三品できちゃった!」(幻冬舎)、「ほんとにこれだけフライパンだけ」(主婦と生活社)などの著書がある。


おもてなし教室 Lady Nada主宰 新酒 慶子 氏

  • しんさか・みちこ
  • おもてなし教室 Lady Nada(富山市)主宰
  • 富山県生まれ
  • 百貨店、放送局勤務後、富山医薬大(現富大医学部)第二外科秘書となる
  • 柳原一成氏、尚之氏や数々の東京、京都の料理家に師事
  • 教室の研究(がんのデータマネジャーとして研修)などで多くの患者と接し、食の大切さを実感する
  • 「乳腺と栄養研究会」や企業の社員食堂などで体に優しいレシピを作成、ホテルの料理監修も担当

制作支援:北國・富山新聞社