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対談「患者とともにある医療を求めて」

富山市で8月、キッズ・フェスティバル開催「子どもの意欲を刺激」


医療と食の充実推進協議会では、これまでに、富山県医学市民公開講座と銘打ち、「がん治療最前線」をテーマに、11回の講座を開いてきた。
8月7日には、富山市内で県内の中学生を対象に富山大学キッズ外科セミナーを開催する。

3月に富山市で開かれた第46回日本腹部救急医学会総会を機に、総会で会長を務めた富大医学部第2外科教授で、医療と食の充実推進協議会代表幹事の塚田一博氏と、長崎県でキッズ外科体験セミナーを開いている長崎大医学部第2外科教授の兼松隆之氏に、市民公開講座やキッズセミナーの意義などを語ってもらった。

定着する市民公開講座

長崎大医学部第2外科教授 兼松 隆之 氏

  • かねまつ・たかし
  • 1945(昭和20)年福岡県生まれ
  • 71年長崎大医学部卒、76年九州大大学院医学研究科博士課程修了
  • 同医学部第2外科助手、講師、助教授を経て91年長崎大医学部第2外科教授。
  • 同医学部長を務めた後、02年から同大学院移植・消化器外科教授
  • 日本外科学会監事、日本消化器外科学会などの理事を務める。

塚田氏「外科医の思想伝える」、   兼松氏「医師のスター目指せ」

医療と食の充実推進協議会はこれまでに、がんの部位ごとに県医学市民公開講座「がん治療最前線」を11回開催してきました。講座には毎回、多くの来場者が訪れています。

  • 塚田氏
  •  3月に開かれた公開講座「がんとお腹の救急症状」のアンケートを見ると、78%の人が「発表の内容がよくわかった」と答え、96%の人が「今後も公開講座に参加したい」としています。講座は、重ねて受講することで少しずつ理解が深まります。口コミなどで来場者が増え、リピーターも多いことに手応えを感じています。
     市民公開講座は、医師の中でも特別に許される、メスを握ることのできる外科医がどういう思想で治療に当たっているのか、医療人としての考え方を知ってもらえる好機だと思っています。食品の流通に例えれば、生産者(外科医)は消費者(患者)に直接話をしたいのです。また、消化器系のがん治療に当たる私の経験から、患者さんは、術後に何を食べたら良いかなど「食」に対する関心が非常に高い。手術の前でも、食事は質、量とも大事な医療の要素です。医療と食を絡めた講座とすることで、多くの人に親しんでもらえると思います。
     市民公開講座は医師にとっても、成長の場となります。医局の若い医師らは市民の前で話すことで会話能力が磨かれ、臨床で患者と向き合う際にも必ず役立つと思うのです。
  • 兼松氏
  •  外科医不足が深刻になっています。私も、若者の外科離れを何とかしたいと思っています。入試で医学部医学科に「地域枠」を設けるのもいいけれど、それだけでは志のある若者が医学部の外科に集まらないのではないでしょうか。
     長崎大のキッズ外科体験セミナーは、「君もブラックジャックになってみないか」をキャッチフレーズにしています。子どもたちが最先端の外科医療の現場で、模擬手術など刺激的な体験をする機会は貴重です。幼少期の感動は、生涯持ち続けます。バットで世界の舞台で戦うイチロー選手のように、医師のスターを目指してほしい。メスで病気と戦う外科医に、純粋なあこがれを持ってもらいたいのです。


キッズセミナーの取り組み

塚田氏「医師のやりがい提示」、   兼松氏「医療への信頼高まる」

長崎大では2005年から、子どもたちが外科手術などを模擬体験できるキッズ外科体験セミナーを開いています。兼松氏がセミナーを提言し、実践してきました。

  • 兼松氏
  •  キッズセミナーの模擬手術では、子どもたちがメスを握り、鶏肉を切るなどします。私自身、医学部4年の時、手術で医師の横についたことがあります。医師がお腹を閉じる時、最後の結さつのひと針を私にやらせてくれました。あの時の緊張感と感動は、今も忘れられません。あの経験が、外科医の道につながったと思います。
     長崎大ではこれまで4回、キッズセミナーを開催しました。参加した子どもの感想文には、「手術はここまで進んでいるのか」という感激や「親がこんなことをしていたのか」という素直な思いがつづられています。彼らはこの体験を一生覚えているでしょう。私にとっては、子どもたちのキラキラした笑顔が何よりうれしかった。それが、セミナーを続ける原動力になっています。また、子どもの親たちも実に真剣にわが子を見ています。セミナーを通して、親子が医師の仕事に理解を深め、家で話し合うきっかけになってくれれば、大変喜ばしいことです。
  • 塚田氏
  •  富大医学部でも2年前から、盆休みに学内の施設を使って「KIDSセミナー」を開いています。これは県内の高校生を対象に、人体モデルを使った人工皮膚の縫合や手術の模擬体験を行う取り組みです。このセミナーを始めた狙いは、医師の仕事の一端を若いうちに味わってもらうことで、後に、医師に限らず職業を選ぶ際に一つの判断材料になると思うからです。
     高校生は模擬手術をやって、「自分でもできる」ことを実感します。実体験することで、医学に対する考え方が変わることもあります。体験を通して、彼らの潜在意識に、少しでも緊張感をもって取り組む仕事の大切さを心に植え込むことができればいいと思っています。それが、何かのきっかけで医師を志すことにつながることもあるでしょう。
     また、指導する医師たちは実に生き生きした表情で高校生に接しており、教えながら、自らが教えられているのです。

キッズ・フェス開催への期待

塚田氏「職業選びの判断材料」、   兼松氏「緊張感と感動忘れず」

キッズ・フェスティバルは、小学高学年から中学生までの子どもを対象に開催します。フェスに期待することは何でしょうか。

  • 兼松氏
  • 長崎大のキッズセミナーの2回目は、離島で実施しました。離島の医師不足を解消するには、力ずくで医師を離島に派遣しようとしても無理です。地元の中学生に医療に関心を持ってもらい、無理なく彼らにUターンで医師になってもらうのが一番。だから、私たちが離島に出掛けていくのは意義があります。精密な機器をフェリーに載せて運ぶのは手間がかかり、多くの協力なしにはできませんでした。大変でしたが、得るものは大きいと思います。
     医療への不安、医師への不信などは、子どもたちが私たちと同じ体験をすることで少しは和らぐのではないでしょうか。患者、医師が互いに、理解し合えるようになれば、世の中は変わっていく。米国では、成績が優秀な若者はIT企業か銀行に勤めると聞きました。日本もそうなるのではないかと思っています。セミナーなどの取り組みが、子どもたちが将来、医師を志すきっかけになると信じています。
  • 塚田氏
  •  キッズ・フェスティバルでは、多感な児童生徒にどう刺激を与えるかを念頭に、運営に知恵を絞っています。子どもたちが何となくイメージしている医師の仕事を分かりやすく提示し、やりがいのある職業の一つとして受け止めてもらえればありがたい。参加した子どもは別の機会に、クラスのほかの子どもに自らの体験を語るでしょう。そういう良い連鎖も期待できます。
     新潟大の医師時代、故郷の栃木県で小学1年の子どもの胃潰瘍(かいよう)の手術をしたことがあります。その時の子どもが、後に新潟大の医学部に入ってきました。キッズ・フェスティバルでも、医師が個々の子どもにさまざまな影響を与える可能性はあるのだと思います。
     市民公開講座は毎回、着実に受講者が広がっており、喜ばしく思います。大人向けに市民公開講座、子どもにはキッズ・フェスティバルというように、2つの取り組みを両輪のように連動して続けていきたいと考えています。


富山大学附属病院 第二外科 診療部門長 塚田 一博 氏

  • つかだ・かずひろ
  • 1950(昭和25)年栃木市生まれ
  • 75年新潟大医学部卒
  • 同大助手、米・ピッツバーグ大移植外科研修
  • 新潟大講師を経て97年富山医薬大(現富大)医学部第2外科教授
  • 日本外科学会などで代議員、日本胆道学会、日本消化器外科学会、
  • 日本門脈圧亢進症学会で理事を務める。

制作支援:北國・富山新聞社

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第3回 富山大学 KIDS セミナー
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