i-shoku.com > 医療を考える:富山県医学市民公開講座 > 「がん治療最前線」 第13回 -胃がん-
富大医学部第2外科と富山新聞社などで構成する「医療と食の充実推進協議会」の富山県医学市民公開講座「がん治療最前線」は9月19日、富山市大手町の富山国際会議場で「胃がん」をテーマに第13回の講座が開かれた。約350人の参加者は、京都府立医大消化器外科の大辻英吾教授ら県内外の専門医の講演に耳を傾け、胃がんの現状や腹腔鏡(ふくくうきょう)を使った最新治療の特性などについて理解を深めた。
富山大学医学部第2外科診療講師 奥村 知之 氏
胃は食物を粥(かゆ)状にして栄養吸収を助け、ばい菌を塩酸で殺して小腸に流す。胃壁の粘膜細胞の中には塩酸、粘液、酵素などを作る細胞と、細胞自体を作る幹細胞がある。幹細胞の遺伝子異常ががんの発端になる。
遺伝子らせんの中のタンパク質に傷が付いて異常を起こすと、細胞増加に歯止めがかからず、積み重なることでがんにつながる。マウスを使った実験では細胞が増える遺伝子を体内に入れると、腫瘍(しゅよう)ができ、がんになることが証明された。。
危険因子として、たばこや塩分の取りすぎ、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染がある。予防因子には果物や野菜、緑茶の摂取が挙げられる。
人口10万人のうち胃がんにかかる人の割合は、1975年から2005年までの間に緩やかに減ってきている。胃がんで亡くなる人の数は1958年から2009年までの統計で急激に減少しており、早期発見によって治るようになったといえる。
富大附属病院光学医療診療部准教授 魚谷 英之 氏
細くて体内に入れやすい経鼻内視鏡が開発され、がん検診が比較的楽になってきた。経鼻内視鏡は直径5ミリで、管が舌の根に触れないため苦しさは少ない一方、照明が1つしかないため撮影画面が暗くなる。口から入れる内視鏡は直径10ミリだが照明が2つ搭載されており、検査時の視界は明るい。また、経鼻内視鏡は鉗子(かんし)が小さく、検査用に採取できる細胞は少ない。のどに疾患があるなどの場合は医師と相談して使ってほしい。
内視鏡は胃と食道のつなぎ目から胃内に入り、胃壁にできものがないかカメラ映像で確かめながら、幽門から十二指腸へ進んでいく。
粘膜筋板より上層の粘膜層にとどまっている早期がんは、内視鏡治療も可能だ。超音波検査で厚みや形を調べ、内視鏡でがんの粘膜を切って全体を剥離した後、再検査で転移がないか確認する。がんの早期発見のため、また克服した後も定期的に検診を受けるべきだ。
富大医学部第2外科診療講師 堀 亮太 氏
メスで体幹に大きな傷を付ける開腹手術に対し、腹腔鏡(ふくくうきょう)下手術は小さな傷を負うだけで治療ができる画期的な手術法だ。開腹手術は、痛みが強い、術後の腸の回復が遅い、臓器の癒着が多いなどの短所がある。
腹腔鏡下手術は腹部に開けた10〜15ミリの穴から操作用器具やカメラを入れて行うため、出血が少ない、回復が早い、癒着が少ないなどの長所がある。
しかし、映像画面で臓器を見るため奥行きの感覚をつかむことが難しい。術後5年以降の再発防止に効果があるかはまだ検証中であり、まだ早期がんを中心に行うのが一般的だ。
開腹手術は術野が広く立体視ができる、とっさの対応が可能、これまでのデータの蓄積があるなどの長所から、標準的な治療とされる。
欧米ではロボットアームを駆使した治療も導入されている。将来、技術の進歩で、腹腔鏡下手術がより多くの胃がん治療に使われることを期待したい。
京都府立医大消化器外科教授 大辻 英吾 氏
日本人が患うがんのうち、胃がんは男女ともに高い発症率となっている。年間で男性3万2千人、女性1万7千人が胃がんで亡くなっている。胃壁は、内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿(しょう)膜(まく)下層、漿膜の5層から成り、がんは必ず粘膜から発生する。
がんが粘膜下層より浅いと早期がん、筋層以下に達すると進行がんとなる。塩辛い食品が体内で変化するニトロソアミン、たばこの煙に含まれる有害物質、ヘリコバクター・ピロリ菌などが発症の原因とされる。
深達度、リンパ節転移の程度、他器官への転移の有無から胃がんのステージ(病期)を見極める。
再発には血行性転移、リンパ行性転移、がん細胞が腹腔(ふくくう)内に散る腹膜転移、一度発生した箇所で再発する局所再発がある。局所再発やリンパ行性転移では開腹手術、血行性転移や腹膜転移では抗がん剤による化学療法が効果的である。
胃切除術には幽門側胃切除術、噴門側胃切除術、胃全摘術がある。リンパ節郭清は、胃周囲のリンパ節と脂肪のみを取り除くD1郭清と、胃から少し離れたリンパ節も含めて取るD2郭清がある。進行がんは50%以上の確率で転移しており、転移の有無にかかわらずD2郭清を行う方が術後生存率は上がる。
低侵襲な治療に、胃の内部からがんを切り取る内視鏡摘切除、小さながんや転移の少ない早期がんに行う腹腔鏡下手術がある。大きながんや進行がんについては、開腹手術が一般的だ。
腹腔鏡下手術は痛みが少なく回復も早いが、高度な技術とコストが必要。切開装置や縫合器も発達し、傷や出血の少ない手術は可能だが、がん克服には何より早期発見が大切だ。
富山県医学市民公開講座では講師陣がパネル討論した。富大医学部第2外科の塚田一博教授が進行役を務め、京都府立医大消化器外科の大辻英吾教授、富大附属病院光学医療診療部の魚谷英之准教授、同大医学部第2外科の奧村知之診療講師、堀亮太診療講師は腹腔鏡(ふくくうきょう)を使った最新治療と開腹手術の特性などについて意見交換した。
富山大学附属病院 第二外科 診療部門長 塚田 一博 氏
ビオクラ食養本社(山梨県) 体に優しい弁当配布
ビオクラ食養本社(山梨県)は消化吸収の負担が少ない「からだに優しいお弁当」とそのレシピを配布した。献立は雑穀入り玄米ご飯、ショウガの梅酢漬け、テンペのショウガ焼き、ナスみそシソ風味、ブロッコリーのクルミあえ、リンゴの蒸し煮でエネルギーは593キロカロリー。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(東京) 最新の医療機具を展示
ジョンソン・エンド・ジョンソン(東京)は腹腔鏡下手術で使う器具や医療品を展示した。
止血専用の電気メスの一種は、胃や大腸手術の前処理として臓器の周辺の血管などを切除する。センサーが血流に反応し、凝固しているかを確認する機能を備えており、直径7ミリの血管まで対応できる。
このほか、術後、腹腔内から体液や血液などを排除するドレーンチューブ、自動吻合(ふんごう)器などが紹介された。
中外製薬(東京) 検診、治療手引きを配布
中外製薬(東京)は検診や治療の手引きを配布し、来場者に早期発見の大切さを呼び掛けた。
んの薬物療法を受ける患者に脱毛や嘔吐(おうと)、出血などの副作用について解説、「最良の医療を受けるためのコミュニケーション法」という冊子も配った。
制作支援:北國・富山新聞社
富山県医学市民公開講座「がん治療最前線」第13回 -胃がん-
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