i-shoku.com > 医療を考える:富山県医学市民公開講座 > 「がん治療最前線」 第14回 -乳がん-
富大医学部第2外科と富山新聞社などで構成する「医療と食の充実推進協議会」の富山県医学市民公開講座「がん治療最前線」は10月8日、富山市大手町の富山国際会議場で「乳がん」をテーマに第14回の講座が開かれた。約300人の受講者は、仕事、家事、育児などで忙しい年代の女性に多い乳がんについて早期発見の重要性と最新治療に理解を深めた。
東京慈恵会医大外科講師 野木 裕子 氏
乳がん治療には手術、薬物、放射線治療がある。薬物治療は、乳管を破って増殖し、血管やリンパ管に入って全身に散った転移の元になる微少ながん細胞をなくす効果がある。
薬物治療は、化学療法、ホルモン療法、分子標的療法の3つに分かれる。化学療法は、アントラサイクリン系やプラチナ系、代謝拮抗剤系の薬を使って細胞内でDNAが複製されるのを防ぎ、がん細胞を殺す。紡錘糸の形成を阻害するタキサン系の薬、ビノレルビンなどもある。
ホルモン療法は、抗エストロゲン剤やアロマターゼ阻害剤などを使って細胞内のホルモン受容体に女性ホルモンのエストロゲンが結びつくのを邪魔し、細胞分裂を阻止する。分子標的療法は、乳がんの増殖に関わるタンパク質から信号が送られるのを邪魔する働きがあり、ほかの抗がん剤と合わせて使用できる。
東京医大病院乳腺科助教 海瀬 博史 氏
技術の進歩により、手術を受ける患者の負担は少なくなっている。1980年代は、大胸筋を切除する胸筋合併乳房切除が主流だったが、同年代後半からは、筋肉を残して乳房のみを取り去る胸筋温存乳房切除が可能になった。2003年以降は乳房温存が増え、現在は約60%が温存療法を受ける。手術跡が縮小したことで、美容面の悩みや術後に腕が上がらないなどの症状が軽減された。
患者は病状に合わせて、乳房とリンパ節をどの程度切除するか組み合わせて選択できる。乳房は、全摘出の場合、自分の体の組織や人工物を使って乳房を再建または左右の釣り合いが取れるように健康な乳房を縮小する手術を受けることができる。温存療法の場合は、抗がん剤や放射線治療を併用することがある。特定のリンパ節を調べて転移の有無を判断できるセンチネルリンパ節生検で、リンパ節の部分切除もできる。
富大附属病院乳がん看護認定看護師 倉田 典子 氏
乳がん看護認定看護師とは日本看護協会認定の資格で、7月現在、全国では163人、県内では5人が活躍している。乳がんの発症が結婚、出産、育児、仕事など生活に与える影響や、複雑化する治療法の選択に悩む患者に精神的なサポートや助言を行う。
相談内容は、病状に応じた乳がんの知識や自宅で過ごす患者の自己管理方法、手術前後の精神的ケアや乳房の補正、再発に対する不安など多岐に及び、患者家族の悩みにも応じる
乳房を温存するとがんが残るのではと心配する患者には、切除した場合と比較した術後経過を解説。脱毛を心配する患者には術前にかつらの装着を勧めるなど、男性医師に聞きにくいことでも気軽に相談してほしい。
富大医学部第2外科助教 松井 恒志 氏
国内では、年間約5万人が乳がんを発症、約1万人が亡くなっている。発症年齢は、40〜50代がピークであり、年々ピークの年代は、上がってきている。発症率、死亡率はともに増加傾向にある。
乳がんの5〜10%は遺伝性で、家族に発症者がいるとリスクは高い。女性ホルモンや成長ホルモンの影響で、身長が高いと発症しやすい。
また女性では、月経期間中、乳がんの増殖を促す女性ホルモンのエストロゲンに乳腺(せん)がさらされるため、初経年齢が早く、閉経が遅いと乳がんにかかりやすいとされる。閉経後には、脂肪組織でエストロゲンが作られるため肥満の人がなりやすい。アルコール、たばこを控え、閉経後、肥満を防ぐことが予防につながる。
富大医学部第2外科助教 長田 拓哉 氏
富大で乳がんの手術を受けた患者300人のうち、検診で異常が見つかった3分の1は、1力月以内に医療機関を受診、自分でしこりなどを自覚した約3分の2は、1力月以上経過してから受診している。検診で早期に乳がんが見つかった患者は、腫瘍(しゅよう)が小さく、リンパ節転移も少ない。一刻も早い受診が、長生きにつながる。
県内では、40〜60歳の女性は2年に1回、乳房をX線で撮影するマンモグラフィーなどの乳がん検診を受ける必要があるが、受診率は3分の1にとどまっている。マンモグラフィーや乳房超音波検査では、触診では分からない小さながんを早期に発見できる。異常があれば早めに病院に足を運んで検査を受けてもらいたい。
富山県医学市民公開講座では講師らが受講者からの質問を基にパネル討論した。富大医学部第2外科の塚田一博教授が進行役を務め、東京慈恵会医大外科乳腺内分泌外科分野の野木裕子講師、東京医大病院乳腺科の海瀬博史助教、富大医学部第2外科の長田拓哉講師と松井恒志助教、同大附属病院乳がん看護認定看護師の倉田典子氏が意見交換した。
富大医学部第2外科教授 塚田 一博 氏
アデランス 抗菌性高いかつら展示
アデランス(東京)は抗がん剤治療で脱毛した場合のウィッグ(かつら)を紹介、通気性に優れ、抗菌性が高いことなどをアピールした。
オーダーメード品は28万円からで注文後、約1カ月で手渡しとなる。既製品は10〜17万円で色、スタイルは豊富。頭皮がかぶれないよう素材を工夫してあり、アジャスターで簡単にボリュームの変化にも対応できる。
越屋メディカルケア パットや下着入浴着を紹介
医療、介護用品の越屋メディカルケア(金沢市)は下着や人工乳房(パット)、入浴着、キャップなど手術、化学療法後のさまざまな状況に対応する衣料品を展示した。
入浴着はがん患者のアイデアを生かして開発した。乳房を切除した傷跡を子どもに見せたくない、湯船にタオルを浸すことを禁じる公衆浴場で注意を受けた、などの声を聞き、商品開発につなげた。
リンパ節を切除後、リンパ浮腫(ふしゅ)の症状を改善するためのミトンやスリーブ、ストッキングも並んだ。
ビオクラ食養本社 自然の味わいクッキー配る
ビオクラ食養本社(山梨)は「野菜のマクロビオティッククッキー(アソートタイプ)」を配布した。
国産小麦を使い、牛乳、卵は使っていない。カボチャ、紫イモ、ヨモギ、トウモロコシなどさまざまな自然の風味を生かし、さっくりと焼き上げた。
あけぼの会が23日セミナー
乳がん経験者による「あけぼの会」富山支部の西田恵子支部長と谷井笑子さんらは11月23日に富山市の県総合福祉会館で開催する「乳がんサポートセミナー」のチラシを配布、来場を呼び掛けた。
セミナーは午後1時半から開かれ、富大医学部第2外科の長田拓哉講師と倉田典子看護師が講演する。
西田さんらは会の案内なども合わせて配布した。あけぼの会は毎月第3日曜日午後1時半から、県民共生センターに希望者が集まり、情報交換をするなどの活動を行っている。
制作支援:北國・富山新聞社
富山県医学市民公開講座「がん治療最前線」第14回 -乳がん-
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